「ずっと…会ってないの。」
春樹が同情を込めて尋ねた。
「うん、パパもママもどこにいるか教えてくれないのよ。…だからあたし一人で探しに来たの。」
おじいちゃん失踪事件だろうか。
いやいや、そんな曰くありげな物件を春樹の父親が買い取るわけがない。
「…でも、僕たち知らないんだよ、ゆきちゃんのおじいちゃん。一緒に探してあげたいけど…。」
困った時の夏。
助け舟を期待して、春樹は夏に目配せした。
「…探すにしても、探す人を知らないと難しいからな。とりあえず…ゆきちゃんのご両親に連絡をとりたいんだけど、…電話番号は。」
「だめっ!家に電話したら連れ戻されちゃう!」
「…俺がなんとかうまく言うよ。」
「夏くんはこんな恰好してるけど、処世術はすごく上手いから大丈夫だよ。」
「…なんか嬉しくないフォローありがとな、春樹くん。とにかく、だ。ゆきちゃんのご両親だって心配してるだろうし、一旦連絡はさせてもらう。…でもちゃんとゆきちゃんの意向を伝えるよ。」
「じゃあ、おじいちゃんが見つかるまでここにいたいっ!」
「…それは、ここの家の主に許可をもらわないと。」
「ここに、いてもいいかな!」
突然春樹に向かって飛んできた質問に面食らってしまった。
いいもなにも、春樹にはどうすればいいものか解らない。
「…父さんに聞かないと。」
結局子供の決定権なんてたかが知れている。
あってないようなものだ。
だからこの家にいる唯一の大人である夏が、この場を収める決定権を持っていた。
「じゃあ、春樹くんの両親にも俺がちゃんと電話して聞く。が、その前にゆきちゃんの両親に電話させてもらう。だから、はい!電話番号!」
さっと立ち上がりメモとペンを取った夏は、それをそのままゆきに差し出した。
観念したのか、ゆきが受けとって数字を綴る。


