お風呂の時間まで、春樹は読書に耽った。 もちろん、手元に開いている本の表紙には北欧神話全集と綴られていた。 相変わらず細かくびっしりとした文字の羅列だったが、意外なほどのめり込んだ。 それはひとえに夏の語りの賜物であり、ノルマンの血を引くお婆さんの記憶のおかげだ。 以前のように眠くなることはないかわりに、 今夜は続きが気になって眠れないかもしれない。 プレゼントしてくれた父さんにも改めてお礼をしよう、と春樹は心の中で決めた。