有料散歩

「夏くんさ。」

煮物のジャガ芋がほくほくで、口元まで持って行って躊躇っている夏に話し掛けた。

「そのかっぽうぎ、って自前なの。」

ジャガ芋をほぼ丸呑みした夏が答える。

「そうだよ。似合うだろ。」

にんまりと笑った。

「割烹着ってすげーんだよな。袖も汚れないしじゃまにならないし。ゆったりなのにずれたりしないし、暖かいしでもう。
俺の仕事の必須アイテム。」

自慢げに言う。

「…へぇ。なんていうか、以外と、似合うね。」

「む、以外とは失礼な。」

「あ、いや、だってさ、夏くんってオシャレなお兄さんって感じだから。」

「お、それは褒め言葉だね。」

「…なんか料理が上手だったりこうやって一緒にご飯食べるとこ見ると以外だなって。」

「ん、まぁ普通お手伝いさんは一緒に飯は食わないからね。俺も普段はもう少し、堅っ苦しい感じでやってるから以外なんてあんまり言われないな。
あ、お手伝いさんやってる事自体が以外ってはよく言われるけど。」

言われることにはさして気にも留めない、軽い受け答えをする夏。

みそ汁も煮物も料亭のそれと変わらないくらいに美味しく、ますます謎が深まる、夏という人。

夕べほとんど食べなかった春樹は、米粒ひとつ残さず平らげた。