「あぁ降ってきたか…。」
とうとう泣き出してしまった空を仰いで夏は呟いた。
厄介な仕事を受けてしまったが、後悔は先に立たない。
先にタクシーでカフェを去って行った女性は、夏に病気の知識があると判ると熱を込めて色々と説明していった。
物腰柔らかくも強引に、夏にしか頼めないと言い、協力してほしいと念を押した。
断るタイミングを逸した夏は、半ば強制的に、仕事を受ける事になってしまったのだった。
カフェの外では、降り出した雨に傘を持たない人々が駆けていく。
カフェに入る前に見上げた時よりも分厚い暗雲がたちこめていた。
「あぁこりゃ本降りになるな。」
傘を持たない夏は、駅に向かって走り出した。


