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絡み合う木々の枝でできたアーチをくぐり抜け、車が停まると目前に山小屋のような木の家。しっかりと丸太を組んだログハウスだ。
大きくはないが、家族で住めるくらいはある。

「元々この山に住んでた人が建てたらしいのだけど。
まだまだとても綺麗だし、ちょこっと修理してね…。ママ、春樹くんが暮らしやすいように中も素敵にしたのよ、見てちょうだい。」

車から降りたところで、にっこりと先を促された。

「母さん、鍵は。」

「開いてるわよぉ。」

そう言われて春樹はドアノブに手をかけた。
頑丈な一枚板の、凝ったレリーフの扉。
重いのかと思い少し力を入れて引くが、蝶番を取り替えたのか以外と軽く開く。
玄関は広く、天井も吹き抜けだ。
玄関ホールには2階へ続く階段がある。
左右には扉。
階段の奥は更に広がり、リビングダイニングだろうか。

「ほらほら、玄関先で立ってたらママ入れないわ。」

「あ、うん。」

頷いて靴を脱いだ。

「はいスリッパ。」

「ありがとう。」

「どう。素敵じゃなぁい。あ、こっちがお手洗いでね、こっちはなんでもない部屋なの。
物置ってとこかしらねぇ狭いし。」

右手のドアを開けて母さんが言った。

見てみると2畳くらいの部屋にぽつんと梯子があった。
梯子が架けられているのは吹き抜けた天井の半分くらいに宙づりになっているロフト。
丸い窓がついていた。

「こっちの奥が洗面所とお風呂。けっこう広いのよぉ。しかもね。」

ちょっと来てと手招きをする母さんについていくと、春樹はいつもよりほんの少し大きな声を上げた。

「えっ!露天風呂。」

バスルームの扉を開けると、普通より広めの風呂場には冊子扉が付いていて、その外は木の板で囲まれた石作りの浴槽があった。

この洋風の家の外から見たら、想像もつかない似つかわしくないものだ。

「ふふ。ママもびっくりしたのよぉ。なんだかこだわりのお風呂って感じよねぇ。」

石の燈籠まである露天風呂。
使うことがあるかなと思いながら春樹はバスルームを出た。

あと階段の奥には思ったとおりのリビングダイニングキッチン。

2階は階段を上りきると広いホールになっていて、東と西に1部屋づつの造りになっていた。