切羽詰まったように質問を重ねられて、ゆきは上半身をのけ反らせ、後ろに手をついた。
「何を…、」
何を、渡されたんだろう。
おじいちゃんが、ゆきに渡したもの。
叔父さんに対してどうしたかったのか…。
なんだ、
なんだ、
なんだ。
思い出せ、ゆきはぐるぐると記憶の迷路を全力で駆け回る。
おじいちゃん、
教えて。
そして見つけた。
小さな光だ。
それがぶわっと、頭の後ろのほうから、全身を包んだ。
呼び水のように、後から後から繋がっているのは、ゆきにとって辛い思い出。
けれども、おじいちゃんと重ねた大切な記憶。
新しく重ねることはもう叶わないのだから、これからは絶対に手放すものか。
それにしても…。
「どうして忘れてたのかな…、」
「思い出した?」
春樹の綺麗な顔が迫る。
のけ反っていた体制を戻して、ゆきはきちんと座り直した。
「うん、思い出した。」
「全部?」
「うん。」
込み上げてくるのは、よく解らない感情と涙。
泣きたい気持ちを抑えて、ゆきは言った。
「あのね、たんざくを渡されたのよ。七夕の。」
芳郎の瞳を借りて見上げた天の川が思い起こされる。
「難しい、読めない言葉…、あれは漢字だったのね。おじいちゃんがあたしに渡して、おばあちゃんのお墓に持って行ってって。」
「それで?」
「うんと、でも短冊って笹に飾るものでしょう?だからあたしお家の笹飾りに…、」
「うん、」
「そのあとは…、わからない。そのままにしちゃったから、捨てられちゃったかも…」
「そんな…、」
そこには大切な事が書かれていたはずだった。
芳郎の切なる願い。


