―6月20日曇り
梅雨の鬱陶しい雨に、かろうじて繋がっていた牡丹の花弁も散り失せた。あれからゆきはふさぎ込んでいるように思う。どうしたものか。やはり私は罪人なのだろう。巡り巡ってきた罪は償うべきだろう。
早く償って、早く明花に会いに行きたい。
徒然なる日記帳も佳境に入ってきた。
分厚いそれの、5分の4くらいにさしかかって、日々の文末に決まり文句が書かれるようになった。
早く、明花に会いに行きたい。
明花がもうすぐ迎えに来る。
そんな言葉だ。
与えられた天寿に近くなればなるほど、死期を悟るのは難しくない。
春樹は知っている。
天寿と言えるかは別にして、死期を悟っている。
けれども、決して容認するつもりなどない。
ましてや自ら望むなど。
―7月7日雨
日本の七夕はいつも雨だ。織り姫の催涙雨。今日は寒い。風邪をひいた。
明花、もうすぐ会える。
―9月17日晴れ
残暑はまだ過ぎて行かない。ゆきがますます明花に似てきた。罪が、早く償えと急かしているのか。
まだ思い切れない私を責めているのか。
明花、赦してくれるか。
―11月5日晴れ
雪虫の飛ぶ様もずいぶん見なくなっていたが、今日久しぶりに見た。
いや、久しぶりと思っているのは私の勘違いかもしれない。気づかぬうちに転んで足を痛めた。老いには勝てない。
明花、もうじきだ。
―1月15日雪
老いぼれになった。昔の事を思い出せない。忘れてしまう前に、償いに決着をつけねばなるまい。私の罪は私のものだ。持って行っても明花に苦労をかけるだけだ。


