「何か考え事?」
なにげなく伺うゆきに、春樹はなんともいえない後ろめたさを感じていた。
昨今騒がれている個人情報うんたらを遥かに越えたプライベートを覗いたとは言えない。
人の思い出はきついと夏が言っていたが、思い出そのものもそうだが、その後の気持ちの持って行き場がどうにも定まらない。
確かに厳しい状況だ。
「なんでもないよ。」
後ろ暗い影を背負ったまま、春樹は微笑んだ。
「あたしのせい?」
なんでもないようには見えないゆきは、きっぱりと尋ねる。
牡丹を見つけて後、春樹の様子がおかしいような気がする。
そもそも穏やかだっただろう春樹たちの生活に波紋を起こしたのはゆきだ。
意地になって、現実逃避のために巻き込んでしまったようなものなのに、こんなに親身になってくれるとは…
ゆきは心苦しい想いに刈られ、また、なにか大事な事を見逃しているんじゃないかと焦燥感が少しある。
いや、おじいちゃんにもう会えないのは理屈で解った。
ただ、おじいちゃんとの約束。大切な記憶。それを辿れば哀しみから抜け出せる。
それも、心で解っている。
それなのに、すっきりしないのは何故か。
生まれ変わっていた牡丹。
まったく興味が湧かなかった。
まだ蕾だったから、本当にそれだけか?
いいや。
何かをこぼしている。
春樹のようにぼろぼろと、ではないものの、大切な何か。
肉じゃがのしらたきのような、みそ汁の油揚げのような、なくてもいいが、あれば全体がしっくりくるような、何か。
畏敬の念と、軽い焦燥感。
なんだろうか…
もっと小さい頃、眠りに落ちる間際に感じた、沈んでいくような、目の前に渦をまく感じ。
そんな時は決まって、誰かに追い掛けられる怖い夢を見るのだ。
こわい、こわい、こわい。
おじいちゃん、
あの人、
こわいひと?


