月を見つめる隆平。
静けさの中で響くのは波の音と震えた隆平の声。



「窮屈やった…ずっと…。お金で買えるものなら何でも手に入ってもほんまに欲しいものは何1つ手に入らひん。」

   

隆平に集まる視線。
その視線から目をそむけるかのよに月だけを見つめる。


「友達も恋人も…僕には…僕には選ぶ権利さえないねん…。親の決めた友達に結婚相手。このままこの道を歩くのかと思うと…どうにかなってしまうんやないかって。」
   

拳を握り締める隆平。


「この家に生まれたからの運命やって。何万人の人々の命が僕にはかかってるんやから仕方ないんやって。そう思いこもうとしてん。やけど出来なくて…僕には出来なくて…。気がついたらあの船に乗ってた…。」
   

腕で顔を隠す隆平。
キラリと光る涙。



「僕等もう友達やろう?」
   


隆平に微笑みかける博貴。


「そうや。友達や。」

隆平の後に続きすばる。


「同じ時を過ごしてんねん。あの船で出会ってこうして一緒に生活してるんやから。」


「友達じゃないなんて言わせひんで。」
   

そして亮に忠義、次々と声をかける。



「あ…ありがとう。」
   


涙で濡れた顔で微笑む隆平。