「そんな挫折誰でもするんやないか。」




ずっと黙っていたすばるが口を開く。
一斉にすばるに視線が集まる。
   

「すばる。何言うねん。」

慌てて口をはさむ信五。
  

「ほんまのことやろう?そんな挫折、誰でも経験するねん。」
   
「そうかもしれひん。やけどこの傷みは自分しかわかれひん。」


すばるに向ける忠義の悔しそうな視線。
  

「そうや。誰もお前の傷みなんかわかれひんねん。」
   
「すばる。それくらいにしとけや。」


すばるの肩に手をかける裕。
  


「お前にやってわかれひんやろう?」


裕の手を振り払うすばる。
  

「傷みも苦しみも悲しみも…自分しかわかれひんねん。」


感情的に怒りをぶつけるすばる。
   


「俺にはわかるで。傷みだけやなく苦しみも悲しみも全て。」



すばるの目を真っ直ぐ見つめる裕。
  

「綺麗事いうなや。」


敵意剥き出しに裕を睨む。
   


「綺麗事なんかやない。見えるねん。全てが鮮明に。お前の手の甲の刺青の意味も…。」



一瞬、凍りつく空気。
化け物を見るかのように裕に視線が集まる。