弱く儚いモノ達へ

   




「…イッ…。」


苦痛で歪む顔。
傷口をタオルできつく巻いていく裕。
信五の手から伝わる体温。

頭の中に電流が流れる。
壊れたテレビのように映像が頭の中を駆け巡る。
ポケットから取り出すナイフ。
手首を切りつける信五の姿。
滲み出る血。
   

「裕。」

心配そうに裕を見る隆平。
   


「…お…お前…。自分でやったやろ?それにこの傷…。」



生々しい傷跡。
一瞬 裕の時間が止まる。
曇る信五の表情。
   


「そんな訳ないやろう。ありがとう。」


強引に裕の手を振り払う。