弱く儚いモノ達へ





左手に布をあて傷を隠すかのように一人戻って来る信五。
   

「どうやった?」

信五の元へ駆け寄る博貴。
   

「頭冷やしてから戻るって…。」


青白い顔。
作り笑いをこぼす信五。
   


「どないしたん?」



信五の様子に気づき声をかける。
   

「何が?」

裕へと視線を映す。
   


「血。」



裕から自分の手へと視線を映すと慌てて傷口を隠す。
   

「対したことあらへん。」

傷口を押さえる手に力が入る。
   

「みしてみん。」
   
「ええって。」


不機嫌な声。
振り向く博貴 亮 隆平。
   
「どうしてん?」

二人のやり取りに割ってはいる亮。
   

「何でもない。隆平。荷物の中に消毒液と綺麗な布探してきてや。」


テキパキと支持をする裕。
   
「うん。」

荷物をあさる隆平。
   

「こんなんでええかな?」

消毒液とタオルを裕へとわたす。
   
「上出来きや。ちょいと沁みるで。」

歯で消毒液の蓋を空けると信五の手首へと振りかける。
滲み出てくる血と共に消毒液が傷口を洗浄していく。