お隣りのあなた。

 

人が怒っているというのにウケるとは何事か。わたしはポカポカとタケルを叩く。
失礼な阿保だ、と思うのと同時に感謝した。タケルのお陰で随分気が楽になった。ありがとう、と心の中で呟く。口に出すのは恥ずかしい、しこそばゆい。というよりはタケルに礼を言うのがちょっと…。と妙わたしの中のプライドがそのたった一言を発することを躊躇わせていた。
ちっぽけなプライドだ。

言わなければ、いけない。ありがとうと言わなければ。
ちっぽけなプライドなんて捨てちまえ!と1人のわたしが叫ぶ中、もう1人のわたしがいや、しかし…と未だ躊躇う。
いけ、わたし!いくんだ!

「た、タケル!」
「んあ?」
「あ、…あり」
「お前、ホントに、ぶっ、ひど」

「あ、阿保ーっ!!」

あんたたち何がしたいの、とカナが呆れたようにボソリと吐き出した。