お隣りのあなた。

 

掴んでいた藤田君の手を慌てて離す。顔にじわじわと熱が集中するのがわかって、ドキドキが加速する。顔が見れなくて、咄嗟に俯いてしまう。
(気持ち)土下座する勢いでわたしはとにかくペコペコ謝った。こんな綺麗な人に触ってごめんなさい!

「ご、ごめんなさいっ!他意があった訳じゃ…」
「いや、そこまで気にしてないし。気にすんなよ」

思いの外優しい言葉を掛けられて、ホッとした。雰囲気的にもっとキツイ事を言われるかと覚悟していたから。(なに気安く触ってんじゃねぇよ、みたいな感じで)
藤田君はわたしの謝り具合に、はたまたヘタレ具合に呆れたように一つため息を小さく吐いた。そして続いてそのままの口調で、「……で」「?」

「“沢谷なずな”について、知りたいんだっけ?」
「う、うん」
「俺、最初に言ったよな?」
「?」

最初、と言われて昨日の出来事を頭に浮かべる。

昨日。

『タダで教えると思った、って顔してんな』

…昨日。

『ねぇ。ねえってば、聞いてます?』
『聞いてる』

きの、う?

『だったら、俺と付き合え』

「あ」