『“沢谷なずな”は、死んだ』

『なずなは鳥なの』

ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる。
あの男子生徒の顔が浮かんで、声が甦って消えて、ななちゃんの顔が浮かんで、あの台詞が甦って、消える。

―――気持ち悪い…。

どうしようも無く、吐き気がした。感情とななちゃんにたいする思いが、ぐちゃぐちゃに混ざりあってわたしの精神をもぐちゃぐちゃにする。

ななちゃん。ななちゃん。ななちゃん。

本当に、死んじゃったの?もう会えないの?
ねぇ、ななちゃん。ななちゃん。
応えてわたしをこの泥沼から助けて。

「菜乃子さん、調子はどう?」

いつの間にか、帰って来たらしい。気付かなかった。保健室の先生はカーテンからひょっこり顔を覗かせた。そしてわたしと目がゆっくり合う。そしてぎょ、としてわたしを見た。

「どうしたの、菜乃子さんっ。どこか痛いの?」

わたしは首を横にふる。違うんです。違うんです。
気持ち悪いんです。
想いが、感情が混ざり合って、ぐちゃぐちゃで気持ち悪いんです。
言えなくて、自然に零れた涙は布団のシーツにじわ、と嫌に広がった。