まるで逃げ出すように美術室を飛び出し、タケルが居るであろう昇降口に駆け足で向かった。心なしかいつもより走るスピードが速い。
「あ、やっと来たよ。おまえ電話くらい出」
「ばか!ばか!タケルのアホ!」
「は!?」
「もう、最低!空気読めばかッ!ホント、もー、ばか!マック奢れっ」
「え、は?ちょっと意味わかんねえよ!」
意味がわからないタケルは一人あたふたし、わたしはタケルに“ばか”と連呼する。端から見れば軽く喧嘩をしているカップルにも見えるが、そんなこと気にしてはいられない。
「タケルのばか!マックはもうチャラだ」
「はっ!?いやいや、なんでマックがチャラになるんだよっ」
「タケルが空気読んで電話なんてしなければ…」
ぐっと込み上げるこの気持ちを抑えつつ、タケルをキッ、と睨む。困ったようにタケルは視線をいろんな所にさ迷わせ、「あー、もしかして」髪の毛をガシガシとがさつに掻きながら言った。
「もしかしなくても、美術室でなんかあった?」
「!」
ふ、と須賀部長の柔らかな笑顔がわたしの頭を過ぎり、わたしは小さく俯く。顔に熱が集まって、熱い。
俯いたつもりだったが、タケルはどうやら頷いたと勘違いしたらしい。本当にばかだ。「んじゃ、マックでその話し聞くから。行こう。俺も菜乃子に聞きたい事あるし」そう言ってわたしの鞄を掴んで歩き出す。わたしは顔を俯けながら歩きだした。
