お隣りのあなた。


「熱心なんですね」

わたしがそう言うと、須賀部長はキョトン、とした顔の後に柔らかく笑った。

「そうかな?」
「はい!そうですよ」

須賀部長が、自覚してない事に少し驚いた。もしかしたら、少し天然なのかもしれない。

「菜乃子ちゃんも今日はやってくの?」
「一応そのつもりですけど…時間あるのかな」
「誰か待ってるの?」
「はい」

タケルのミーティングがいつ頃終わるのかしっかり聞いておくべきだった。せっかく絵を描き始めてタケルから呼び出しがあったら嫌だし。

「もしかして、彼氏?」
「ち、違いますよ!」

悪戯っぽく笑った部長に、即答する。
タケルとわたしが付き合っているとか…無いな。有り得ない。
須賀部長がクスクスと可笑しそうに笑いながら「噛んでるよ」と言われて、ようやくわたしは恥ずかしくなって顔を赤らめた。まるでタケルが彼氏だと肯定しているようなものだ。

「友達っていうか、腐れ縁です」
「ホントに?」
「ホントですっ」

「そっか」また柔らかく笑って須賀部長は置いていた筆を手に取った。

「よかった」
「?何がですか?」

須賀部長はわたしを見て一言、「菜乃子ちゃんに彼氏が居なくて、ってこと」