お隣りのあなた。

 

タケルが部活のミーティングがあるというものだからわたしは少しの時間部活をやっていく事にした。

「ミーティングがあるならマック明日にすればいいじゃん」
「いや、今日がいいんだ!」

何故か頑として譲らなかったタケルのせいだ。部活は嫌いじゃないから、別にいいのだけれど。

部室には独特の臭いがつねに立ち込めている。初めて部室に入った時は余り快く思わなかったのだが、今ではもう慣れっこだ。絵の具の臭いはもう気にならなくなった。
部室には1人、わたしより先にキャンバスに向かう先輩が居た。

「あ、菜乃子ちゃん」
「須賀部長!こんにちはっ」

須賀先輩は3年生だ。大人っぽくて、落ち着いていて、黒髪がよく似合う素敵な先輩で、美術部の部長だ。部活動にとっても熱心で、絵が上手い。
わたしの憧れの先輩だった。

「今日は部活無いのに、どうしたの?」

形のいい笑みに、思わずドキリとする。冷静になれ、と心の中で渇を入れて「須賀部長こそ、どうしたんですか?」笑ってみせた。うまく笑えたかはわからないけど。

「3年生ってあんまり時間無いからさ。少しでも作品進めとこうかなと思ってさ」

そう言って須賀部長は筆を下ろす。一挙一動が綺麗で、夕焼けがかった空をバックにした須賀部長はやけに眩しく見えた。