カナに教室まで引っ張られて戻る頃にはミキさん達は既に教室には残っていなかった。教室はいつも通りのざわめきを取り戻していた。
「菜乃子」
カナの声に、わたしは教室を見回していた視線をカナに向けた。少し顔が強張っていて、わたしは焦った。
「えと、カナ?どうかした?」
「菜乃子、なんか変だよ」
「そう、かな…」
「わたしには、そう見える。もしかしてななちゃんの夢を見たせい?」
多分、カナはあのうさぎの人形の事を指しているのだろう。わたしは首を横に振る。
「だったら、」
「あれは、ホントにわたしの、ななちゃんのうさぎの人形だったんだよ」
本当にそうだった。確かに、少し古びた感じではあったが、あのうさぎの人形だった。間違い、無い。
「ホントに、あの人形だったんだよ…」
「……、菜乃子」
声が、潤む。瞳が、潤む。
カナがわたしの名前が妙に切なくて、わたしの胸をきゅう、と締め付け、涙腺を緩ませた。
「ホントに、ホントに、」
「ごめん、疑って。わかったから、泣かないで。ね?」
カナにハンカチを差し出され、わたしはそれを受け取る。
「…ごめん、ありがとう」
「気にしないで…。とりあえず、席着こうか」
「うん」
カナの静かな声にわたしの高ぶっていた感情は徐々に引いていく。カナが居なかったら、今頃わたしは大泣きしていたに違いないと心の隅で思った。
