カナの笑いはどうやら収まったようだ。普段の落ち着きを取り戻したカナはフゥ、と一息吐いた。
「ちょっと笑いすぎたわ」
自覚があったようでよかったと思う。これで自覚が無かったら救いようが無いではないか。
「気をつけてね。笑ってるのばれたらイロイロまずい事になってたよ、きっと」
「そう?」
「うん。多分」
「曖昧だなあ…」
「あはは」
曖昧と言うカナにわたしは曖昧に笑った。カナがもう1度フゥ、と息を吐いた。そして「教室戻ろうか」とわたしを視線で促す。わたしは頷いて回れ右して教室に戻る。つもりだった。
「!?」
回れ右した瞬間に、人に思い切りぶつかった。ホントに思い切り。
慌てて離れてぶつかった人を見上げた。
そこには、見慣れない男子生徒の顔があった。同じ学年であることを示す青のラインが入ったネクタイをしていた。なかなか美形だ。知らない内にみるみる頬がほんのり赤くなる。
「えと、ごめんなさい」
頭を下げた瞬間相手の胸板に頭があたる。「わ、わっ、ごめんなさいっ」慌てて1歩後ろに下がると相手は何も言わずにわたしの横を通り過ぎようとした。
見えたのだ。
否、見つけてしまったのだ。
ポケットから飛び出るその携帯電話のストラップであろうウサギの人形を。
それは確かに、わたしの、
「……ななちゃん!!!」
気付けば、そう声をあげて、相手の腕を縋るように掴んでいた。
