お隣りのあなた。



「ほ、んとに、意味、が、わかんな、いっ」

ミキさんは悔しそうに眉をしかめて、また涙を流し出した。相当ひどい理由だったらしい事は一目瞭然だった。
周りの子達が、「ミキ大丈夫?」「元気出してよミキ」「泣かないでよぉ」と声を一様にかけてもミキさんは泣き続ける。

「だ、って!!」

感極まったようにミキさんは大声をあげた。

「人形の名前がわかんなかったからとか、まじ、どんだけ!!」

「は?」

わたしも思わず声をあげる。その声は慰める周りの女子生徒達によって上手く掻き消された。

え?人形ってなにさ、それ!

世の中にはいろんな理由で振られた人がいる。
例えば、性格の不一致だとか、顔の好みだとか、恋愛対象にどうしても見れないだとか、まあ理由は十人十色だ。
だけど。
人形の名前がわかんないから振られたのは初めて聞いた。
カナの方にちらりと目を向ければ笑いを堪えているのか、顔を下に向け肩が小さく震えている。

「こ、こら、カナっ」
「ふ、だって…!」

小声で注意すれば、カナは笑いを堪えながら小声で答える。
カナが笑っている事がばれたら、確実に怒られる。
ミキさんでは無くて、
その周りの女子生徒達に。