ふん、とそっぽを向いて歩き出すわたしにタケルは自転車でゆっくりとその後を追う。何が楽しいのかタケルの顔はにやにやしっぱなしで気持ち悪かった。

「ちょっと、ついてこないでよ」
「別に菜乃子について行ってる訳じゃねえよ。学校一緒だからしょうがねえだろ」

言われてみればその通りだ。わたしの悔しさは更に増して、小さくばれない程度に下唇を噛んだ。

「おー、悔しそうな顔してんな」
「五月蝿いなあ!先行けばいいじゃんッ」
「あ、そういう事言っちゃっていいの?時間見てみろよ」
「?…」

言われた通りわたしは時間を確認する為に携帯電話を開いた。

「!!」

タケルがにやにやしていた理由がわかった。このまま歩いていては確実に間に合わない時間だった。思ったよりもわたしはゆっくり歩いていたらしい。

「タ、タケルさん」
「なんでしょう」
「…後ろに乗せてはくれないでしょうか」
「今度、マック奢りな」
「は!?」
「何?嫌ならいいよ、歩いていけばいいからねー」

タケルのにやにやは止まらない。たかが自転車の後ろに乗るだけなのに随分とお高い条件がついた。ここで断れば確実に遅刻。わたしのクラスの担任は遅刻に非常に五月蝿い人だったから、ここで遅刻するわけにはいかない。

「わ、わかった。奢るから乗せて」
「やりぃ!約束な!ほら、乗れよ」

やるせない思いで自転車に乗る。同時に自転車は勢いよく走り出した。