「な……なちゃんが、」
「……菜乃子」
「ななちゃん、…とーきょーに行っちゃったよ」
「菜乃子」
呆然とするわたしをお母さんは抱きしめた。さっきまであんなに泣いていたのに、今は嘘のように涙が出ない。
「あのね、菜乃子」
抱きしめながらお母さんがわたしを呼んだ。そのままわたしは耳を傾ける。
「ななちゃんが、菜乃子に渡して下さい、ってコレ持って来たの」
体をゆっくりと離して、わたしにお母さんは“それ”を差し出した。
「……、ちゃーりー」
ななちゃんがいつも肌身離さず持っていた猫の人形のちゃーりー。ななちゃんのお気に入りの人形だ。「それでね、」そう言ってお母さんは話を続けた。
「菜乃子の、ほら、あの小さいうさぎの人形、」
「キャンディー?」
「そう、それ。そのキャンディーは今ななちゃんが持ってるのよ」
「何で…?」
