いつもはたいしたことない距離だと感じていた幼稚園から家までの距離は途方になく長いものに思えた。
家まではもうすぐの筈だ。気持ちが焦る。
早く、早く、早く。
「っ!!」
もっと早く。その一心で足を一生懸命動かしたら、バランスを崩して転んだ。わたしの身体がコンクリートに打ち付けられる。
「…いたい……っ」
起き上がって傷口を見ると、膝が擦りむけて赤い鮮血が流れ出ていた。
『菜乃子ちゃん』
「…………な、な…ちゃん」
涙腺が緩む。
ななちゃんの笑顔が、また頭に浮かんで、
また、消えた。
「…なな、ちゃん」
早くしなきゃ、ななちゃんは東京に、遠くに行ってしまう。
「……な………な、なちゃん」
だけど足は痛くて、痺れて動かない。
早く、しなきゃいけないのに。
「……っななちゃああっ………な、……ちゃん…っ」
耐え切れなくて、泣いた。ななちゃんのままに頬を叩かれた時なんか比でもないくらい、号泣した。
