「せんせー」
タケルの泣き声に掻き消されないくらいの大声で、唐突に声がした。見れば、カナちゃんが片手を挙げてわたしたちを見ていた。カナちゃんはわたしの次くらいにななちゃんと仲が良かった子だ。
「あたし、タケルくんが何て言ったか知ってます」
そこで完全にわたし向けられていた先生の注意の目はカナちゃんに向けられた。
「知ってるの?」
「はい」
「じゃあ、先生に教えてくれないかな?」
菜乃子ちゃんの代わりに、と先生が付け加えて、ちらっと横目にわたしを見た。なんだか胸がむかむかしてわたしは顔を逸らす。
「タケルくんは、ななちゃんが死んだって、言いました。そしたら菜乃子ちゃんが怒ってタケルくんを叩きました」
カナちゃんの言った事に、先生はビックリしてタケルを見た。
「タケル君」
戸惑ったようにタケルを見ながら、
「本当にそんなこと言ったの?」
タケルは涙を手で拭いながら小さく頷く。
「だって、ななちゃん、幼稚園に来ないじゃん」
「…、けどねタケル君。言っていいことと、悪いことがあるわよ。なずなちゃんが死んだなんて、そんなこと言っちゃ駄目でしょう?」
ね?なんて諭す先生は明らかにタケルの味方をしているように見えてならない。悪いのはタケルだと言っていても、叩いたわたしの方が悪いと言われているみたいでなんだか嫌だった。
