先生はタケルがわたしを叩いているのだろうと思っていたに違いない。
泣きじゃくるタケルとその横にムスッ、と不機嫌な顔で立つわたしを見て、目を丸くさせた。
「え、と、菜乃子ちゃんが、タケル君を叩いたの?」
半信半疑な先生にわたしは黙って頷く。タケルが横で大声を出して泣くのでわたしはタケルをキッ、と鋭く睨む。そんなわたしを見てタケルは更に大声で泣いた。
「どうしてタケル君を叩いたの?駄目じゃない」
タケルの頭を優しく撫でながら、先生はわたしに言った。まるでわたしが悪いみたいな言い草だ。タケルが1番悪いのに。
「だって、ななちゃんの事、ばかにした」
「…タケル君はななちゃんの事を何て言ったの?」
「………」
ななちゃんが死んだ。
自分の口から言うのは躊躇いがある。黙り込むわたしに先生は眉を軽くしかめた。
「何て言ったの?教えて菜乃子ちゃん」
「…タケルくんからきいてよ」
「菜乃子ちゃん」
「タケルくんがわるい」
「菜乃子ちゃんたら」
やっぱりななちゃんが死んだなんて、口が裂けても言えない。言える訳がない。
そう、言える訳がないのだ。
