お隣りのあなた。



勿論、怪しく思うのはわたしだけでは無い。

幼稚園内でななちゃんの事を知っている園児の間では様々な噂が飛び交っていた。
ななちゃんは入院しているので幼稚園には来れない。
ななちゃんは幼稚園をサボっている。だから来ない。
ななちゃんは家出していて幼稚園に来れない。
………
……………
………

「俺が思うにさ」

お調子者のタケルは顎を軽く摩りながら、辺りを静めた後、皆の顔を見回しながら呟いた。その仕種は当日流行っていた探偵アニメの主人公そっくりだった。

「ななちゃんは、死んだんだと思う」

その言葉に辺りはざわめき、わたしは固まった。

ななちゃんが死んだ?
ななちゃんが、死んだ?
ななちゃん、が―――


「うわぁっ!」
「菜乃子ちゃん!?」

気付けばわたしはタケルに殴りかかっていた。本当に、衝動的に。タケルは短い悲鳴をあげてその場に尻餅をつく。

「何すんだよ!」
「ななちゃんに、あやまれッ!」
「はあ?」
「あやまれ、あやまれッ!ななちゃんが死んだなんてうそ吐いた事、ななちゃんにあやまれッ!!」

とにかくななちゃんが死んだ、と言われたのが悔しくて、吐き出した言葉はななちゃんに謝罪するよう求めた催促の言葉ばかり。
周りが騒然とし、必死にわたしを止めた。

「菜乃子ちゃん止めなよ!」
「菜乃子ちゃん!」
「先生、菜乃子ちゃんとタケルくんがけんかしてる!」

聞く耳持たないわたしはそのままポカポカとタケルの頭を叩きのめしていた。