「よう」と何食わぬ顔で藤田君が言うものだから、反射的に「よっ」と返事を返してしまった。返した後に、何やってんだ、と少し自分に呆れた。暢気に挨拶なんて交わしてどうするんだ。
一人悶々とするわたしに藤田君はそれより、とわたしを見ながら言った。
「どうして俺の名前知ってんの」
「えっ?あー、えと、保健室の先生が言ってて。それで知った、っていうか知ってしまったというか……」
「ああ……。なるほどね」
咄嗟の質問に、慌てて答えたわたしに若干の疑問を抱いているようだったが藤田君は納得してくれたようだ。
「それより、」と今度はわたしが藤田君に声をかける。さっきから気になってる事があったのだ。
「さっき、『あ、いた』って言ってたけど、もしかしてわたしに何か用だったの……?」
少し振り返って、言っていたよな、と頭の中で再確認した。なんか変な用事だったら嫌だな。
「ああ、そうそう。菜乃子の事探してたんだ」
恥ずかしげもなく藤田君はわたしの事を名前で呼ぶものだから、なんだか逆にわたしが恥ずかしくなる。藤田君がわたしの名前を呼ぶのは、タケルやカナが名前を呼ぶのとはなんだか違う。
