お隣りのあなた。





「―――ということで明日は朝礼があるから、皆遅刻しないように。以上」

帰りのHRで、担任が明日のことを話していたけど、まるで遠いどこかで話しているように聞こえた。ちゃんと聞かなくちゃいけないと思ってはいるものの、意識は完全に担任から外れていた。タケルのあの台詞が頭の中でループする。

「おい、朝倉。聞いてるのか」
「…………」
「おい、朝倉」
「…………」
「こら、朝倉人の話はちゃんと聞け」
「……菜乃子」
「……ん?どうかした、カナ?」
「俺の話は聞こえない癖に、別の奴なら聞こえるのか。いい度胸してるな、朝倉」
「……!!」

カナに声を掛けられるまで、先生には悪いが、全く気づかなかった。目の前には、眉間に皺を寄せた不機嫌そうな先生の姿がそこにはあった。体育の教師とあって、先生は返事とか、きびきびした行動とか、そういったものに五月蝿かった。
嫌な予感がわたしの胸を横切る。面倒なことに巻き込まれるのはごめんだ。

「話を聞かない朝倉には、特別に先生が体育準備室の掃除をやらせてあげようとおもうんだが、どうだ朝倉」
「い、え。結構です。ホントすみませんでした」
「遠慮しなくていいんだぞ、朝倉」

満面の笑みの先生に気圧されながらわたしは負けじと引きつった笑みで返す。「本当に、いいです。今日、用事あるし」これからタケルをカラオケに誘うんです。と、心の中でこっそり付け加えた。