タケルが、タケルじゃない。タケルはわたしの言葉に耳を傾けるつもりはないらしい。一拍置いてから、再び静かに話を始めた。
「忘れたいんだ。早く、1日でも早くこの気持ちを、消しちまいたいんだ。こんな想い、……忘れたいんだよ」
だから、彼女をつくった。
とタケルは比較的早口でそう言った。
「ごめん……」
知らず内に、わたしの口から謝罪の言葉が零れ落ちる。タケルはわたしに対してか、それとも叶わなかった自分の恋路にか、はは、と渇いた笑いを漏らした。何とも痛々しい笑いにわたしはこんな話を無理矢理させてしまったという罪悪感にいさなまれた。
カラオケにでも、誘おう。勿論、わたしの奢りで。それでタケルの気持ちが軽くなるのなら安いもんだ。
あの日みたいに一生懸命になって、無我夢中に歌えば、少しでも気は紛れると思った。
「……タケル、あのさ、今日―――」
「お。チャイム鳴ったぞ。教室行こうぜ」
タイミング悪く、その日最後の授業を始めるチャイムが鳴った。わたしの言葉は、チャイムとタケルの声によってうまい具合に掻き消された。
