お隣りのあなた。


「なんか……」そのまま黙ったままのタケルにわたしは静かに声をかける。

「なんか言いなさいよ」
「…………、……。昨日、」

悩むそぶりを見せたタケルは観念したかのようにしゃべり始めた。いつものタケルらしさは全くなかった。

「昨日カナに、彼氏の話を聞いたんだ」
「彼氏さんの?」
「そう。その話を聞いて、俺、」

そこまで言ってタケルは一旦黙り込む。そして重たい口を開いた。

「俺、無理だと、思った。……どっかで、頑張ればもしかしたらカナと付き合えるかもって思ってた。カナとの付き合いは長いし、その長い間カナを想ってきたんだ。カナに彼氏ができてもその想いだけ、
その想いだけあれば大丈夫だと思ったんだ」
「タケル……」
「だけど、無理だよ」

タケルの声は言葉の数を増やす度に涙ぐんでくる。

「あいつ、凄く彼氏の事、好きなんだよな」
「タ、ケル」
「彼氏の事、凄く幸せそうな顔して話すんだ」
「……タケル、もう、いいよ」
「俺、初めて見た。あんな顔して、笑ったり、するあいつ初めて見たんだ」
「タケル、もういい。もういいよ」
「俺、……俺、本当に、」
「っタケル……!」