啓吾が消えて…私の心も半分時間が止まった。


泣き暮らして…
後悔して…三人だけ家族の
歯車もずれかけていた。


後悔ばかりを口にする母に
穏やかだった父は嫌気がさして
あんなに仲のよかった夫婦だったのに
今は別々の部屋で暮らしていた。


私は…啓吾と約束した通り
勇樹の大きな愛に守られて暮している。
罪悪感に逃げ出したくなっても
勇樹の腕の中にいる時が
一番心が安らいだ。


それでもやっぱり
私にとってぽかんと空いた場所は
啓吾がいた。


  会いたい


夢でもいいから会いたい


だけど夢も啓吾には
会わせてくれなかった。
不思議だった。
こんなにここにいるのに…
私たちはもうどんな形でも
会う事はないんだろうか……。



啓吾と最後に会った夜
季節外れの雨が降って
真っ白だった雪が黒く汚く変わっていた。


啓吾が出て行った朝
家の前についていた靴の跡に
黒い水がたまっていたのを
今でも覚えてる。