勇樹を必死に抱きしめていた。
そして二人の言い争う声は 勇樹の父親が出て行って
静かになった。


しばらくして母親も出て行った。


「朱奈…もう大丈夫だよ。」


勇樹が私の胸でそうつぶやいた。


「あ……」

私は慌てて勇樹から離れる。


「ありがとう……。」



私は首を激しく振った。


「かわいそう……勇樹…かわいそう……。」



両親の愛に包まれて生きてきた私にとって
勇樹の置かれた境遇は気の毒すぎた。



「いいんだ。
昔から…気がついていた。
あいつらが俺に無関心なことには
もう傷つかないよ。
ちっこい頃何百回も失望してきたからさ。」


「勇樹……」
涙が溢れてきた。



「朱奈が泣くなよ……。」

勇樹は私の頭を撫ぜる
私は勇樹にでもなったように泣けてきた。


「サッカー始めたのも
最初は褒めてほしかったから……。
頑張ったら絶対愛してもらえるって
思ってたんだけど…そんな簡単なもんじゃなかった。」



「これからは…
私がいっぱい褒めてあげるから……」



「それが一番嬉しいかも~」
勇樹は私の顔を覗き込んで笑った。