「啓吾です。」


おじいさんがシワシワの細い腕が啓吾の
頬に触れた。


「啓吾・・・・・。
啓吾が…こんなに大きくなって…」



おじいさんがよけいなことを
言わないことを必死に祈る。


まるで薄い氷の上にいるような気がした。


ひとつ間違えたら
その凍りひびが入って 私たちは
冷たい地獄に堕ちてしまいそうだった。


「啓吾
来てくれてありがと……すまなかった…
ほんと……すまない・・・・」


そう言いかけて細い腕はパタンと力なく
下に落ちた。



慌てておばあさんが啓吾に近寄った。



「すまないって…おじいさんは何を僕に
言いたかったんです?」



「さあね…最近記憶も混濁していて
でも啓吾くんに会えたのは
嬉しそうだったわね。
ありがとう…本当にありがとう…」


そう言うと私たちにも頭をさげた。


私はホッとしてすぐにもここを出たかった。
緊張感で切れそうになっていた。



「あれ…この写真は?」


啓吾が飾られていた写真を指差して
私たちは再び凍りついた。