手紙を読み終えた夏季は、雪乃の字から目を離す事が出来ず、目頭も熱くなり、手も心も震える。
と、詩織が傘を下ろし、空を見上げる。
「夏季…雪乃が笑ってる」
さっきまで暗かった空は綺麗に晴れ上がり、青空が顔を覗かせている。
雪乃…笑ってるの?
想いを伝えきって、気持ちがスッキリしたのかもしれない。
「ありがとう、雪乃」
雨は止んだが、夏季の頬を雫が伝う。
あなたは私にたくさんの贈り物をくれました。
私はそれを大切に守っていき、雪乃と過ごした時間をずっと忘れない。
ありがとう、雪乃。
大好きだよ。


その後、コンサートでの夏季の歌が高く評価され、夏季は「教会の宝」と呼ばれるようになった。
だがそれは夏季が望んだものではなく、夏季が望む未来は、もう叶わないものとなった。
END.