マリア教会

「お願い…歌って夏季。私、夏季の歌が好きだったから…私にも届くように歌って」
そしていつものように優しい笑顔を浮かべる雪乃。その笑顔が今は胸に突き刺さる。
「雪乃…」
雪乃に触れようと手を伸ばした時、また雪乃が咳込んだ。さっきよりも激しく。
「部屋を出て下さい」
医者が夏季と詩織に言う。
「行こう、夏季」
詩織に促され扉に近付く。部屋を出る間際、振り返ると雪乃は笑顔を浮かべていて、本当の天使のようだった。
パタンと、小さな音を立て扉が閉まり、夏季は閉じた扉に背中を預けた。
「詩織…」
小さく呟くと、詩織はため息を吐き説明を始めた。詩織の表情も暗い。