マリア教会



結局熱はなかなか引かず、夏季は三日間寝込んだ。
詩織に言われたからではないが、雪乃の事が気になってお御堂に行ってみた。だが雪乃はいなかった。ピアノの音色も聴こえない。
「あそこかな」
お御堂の裏に回ってみると、やはり雪乃はいて、ベンチに座りボーッと空を見上げていた。
「雪乃…」
その姿が何となく胸に突き刺さり、つい呼んでしまった。小さな声だったが雪乃は聞こえたらしく、弾けたようにこちらに駆け寄って来る。
「夏季!風邪は大丈夫なの?詩織から聞いて心配してたの」
「……」
雪乃は本当に心配そうに夏季をじっと見る。
私は雪乃に酷い事を言ったのに、心配される理由もないのに、罪悪感だけが広がる。こんな事なら酷く責められたほうがマシだ。