マリア教会

どうしてあんな事言ってしまったんだろう。どんな理由であれ、雪乃はチャンスをくれようとしただけなのに、気持ちが高ぶってしまい傷付けてしまった。
大切な人なのに…大切な人にあんな顔をさせてしまった。
熱で気持ちが不安定だからか、それとも雪乃に酷い事を言った罪悪感だろうか、夏季の目から涙がこぼれ落ちる。
そんな夏季の頭を詩織は優しく撫でてくれた。
「傷付けたと思ったら、ちゃんと謝らないとな。今日はもう寝ろ。早く治さないと、コンサートに出れなくなるぞ」
「詩織…」
「ん?」
「何でもない…」
夏季のコンサート出場理由を知ってるか聞こうと思ったが止めた。もし知らなかったら詩織の事だから怒って聖歌隊のリーダーの所に乗り込むかもしれないし、知っていたら知っていたでこっちがショックだ。
「じゃあお休み」
「お休み」
そして詩織は出て行った。
いつもの部屋が広く感じ、淋しかった。