マリア教会

「雪乃…それって、私の事馬鹿にしてる?」
「してないわよ!ホントに私は――」
「もういい!」
夏季の言葉が雪乃を弾く。
雪乃の気持ちはよく分かる。私の事を思ってやってくれた事も分かってる。だけど、素直に受け止める事が出来ない。
物心ついた時から歌っていて、聖歌隊を目指すと決めた時から毎日一生懸命に歌って来て、コンサート出場が決まった時は自分の実力が認められたと本気で思っていた。
なのに、それは人の力で決まった事で、歌も上手く歌えない。
コンサート出場の報告をした時、雪乃はとても喜んでくれた。だが、あれは嘘だったのか。何だか、全てに裏切られた気がした。
「何でそんな余計な事すんの…。無名の新人が出て歌ったって、私が恥かくだけじゃん。それくらい雪乃だって分かってるでしょ?私に自信を付けさせたいって、私が自信なさそうに見えたの?」