マリア教会

並んでベンチに座ると、雪乃が空を指差した。
「見て夏季。空が笑ってる」
「笑う?」
確かに空は快晴だが、笑うという表現は初めて聞く。
「小さい頃ね、お母さんが言ってたの。空には亡くなった人達が暮らしていて、天気がいい日はその人達が楽しく笑ってるんだって」
「そうなんだ…」
でも空は笑ってるけど、雪乃の表情はどことなく淋しそうだった。だが夏季はそれには触れず、話を続けた。
「じゃあ雨の日は泣いてるのかな」
「うん。だから私は雨の日は歌うの。私の歌で空の人達が楽しくなってくれるように」
「いいね、それ」
雪乃の歌は暗い気持ちを明るくしてくれる。そんな雪乃の歌だから、雨だって晴らしてくれそうな気がする。なによりも、そんな雪乃の気持ちが素敵だと思った。