マリア教会

｢本当に大丈夫なの？｣
｢大丈夫。そろそろ夏季が来る頃だろうと思ったから、ちょっと驚かそうと思っただけ｣
いつもの愛らしい笑顔。汗もかいてない、いつもの雪乃だ。
それを見た夏季は安心してその場に座り込んだ。
｢もう…本当に心配したんだよ｣
｢ごめんね｣
悪戯をするなんて雪乃らしくないけど、こんな悪戯は止めてほしい。これじゃあ心臓がいくつあっても足りない。
悪戯を決行した当の本人は、ステンドグラスから漏れて来る光を眩しそうに目を細め見ていた。でもその目が少し淋しそうで、また胸がドキッとした。
だがすぐに雪乃はいつもの表情に戻り夏季を見つめてきた。
｢ねえ夏季、外に行かない？｣
｢練習は？｣
｢たまにはいいじゃない｣
｢もう…｣
そんな顔でわがままを言われては断れない。
それに、今日の雪乃は少し気になる。