マリア教会



コンサート出場が決まった夏季は嬉しくて、早く雪乃に伝えたくて急いでお御堂に向かった。
お御堂に近付くとピアノの音色が聴こえて来るはずなのだが、今日は聴こえない。
まだ来てないのかな?そう思いながら扉を開けると、マリア像の前で雪乃が胸を押さえうずくまっていた。
「雪乃!?」
慌てて雪乃に駆け寄る夏季。
「どうしたの!?大丈夫!?雪乃!」
雪乃は胸を押さえたまま、額にはじんわりと汗をかいている。訳の分からない夏季の脳がパニックになる寸前、雪乃がいつものようにニッコリと笑った。
「大丈夫よ」
「え?」
そして雪乃はスッキリした顔を見せ何事も無かったかのように立ち上がる。
さっきは本当に苦しそうだった雪乃が急に普通に戻ったが、夏季はまだ心配で声をかけた。