マリア教会

レイラは表情が変わらない少女にもう少し近付き、精一杯の笑顔を浮かべた。全然笑わなくなったから笑い方まで忘れてしまったようだ。
「面白いものでも見えるの?」
レイラのぎこちない笑顔を見ても少女は無表情のままで、でも小さく答えてくれた。
「…空が笑ってる」
「笑う?」
意味が分からず聞き返すと、少女はまた広い空に目を向けた。
「ある人が言ってたんです…。青空が広がってる時は、空にいる人達が笑ってるって…」
「空がねぇ…」
空にいる人達というのは、もうこの世にいない人の事だろうか。だが、死んだ者がみんな空に行けるとは限らない。中には地に堕ちていく者もいるだろうし、上にも下にも行けずこの世をさ迷っている者もいるかもしれない。