いつものように雪乃のピアノの旋律に合わせ夏季が歌い、それを二時間続け今日の練習は終わった。
あまり歌い過ぎると喉を潰したり歌い方が変わってしまうから、聖歌隊のように朝から晩までガッツリ練習しない。
「どうぞ」
お御堂に並ぶ椅子に座る夏季に雪乃が冷たいお水を差し出す。熱くなった喉を冷ますのも大事な事。
「ありがとう」
水を受け取り渇いた喉に流し込む。とても気持ちいい。
そして歌ってる時は気にならなかったが、練習を終えてある単語が浮かんできた。
「ねえ雪乃。咎人って知ってる?」
「咎人?」
雪乃は夏季の隣に座り、首を傾げる。夏季は廊下で話してた二人を思い出しながら口を開く。一応人がいないか確認して。
「ここに来る途中咎人の事を話してる人がいたんだ。私も詩織から聞いた事はあるけど、詩織は咎人には絶対に近付くなって言うだけで何も教えてくれなかった」


