マリア教会



お御堂に近付くと、いつもの雪乃の美しいピアノの音色が聴こえて来る。
「雪乃」
夏季が中に入ると雪乃はピアノを弾くのを止め、愛らしい笑顔を見せた。
「いつも早いわね、夏季」
「早く練習したいから」
一応夏季は聖歌隊に入隊したので聖歌隊での練習も毎日あるが、雪乃に指導してもらってるという事で、聖歌隊の練習は半分に減らしてもらってる。夏季だけ特別扱いみたいであまり気にいってない人もいるが、夏季は気にしない。
夏季に対する陰口も、雪乃との練習で忘れてしまう。
夏季は雪乃との練習が楽しみで早く来てしまうが、もしかしたら雪乃はもう少しゆっくりしたいのかもしれない。
「迷惑…だった?」
夏季が小さく言うと、雪乃は夏季の頬にそっと触れニッコリ笑った。
「全然。夏季が楽しそうだと、私も嬉しいから。さ、始めましょ」
「うん」
もう一つ早く来たい理由が分かった。
私は、雪乃の傍にいたいんだ。