マリア教会

全身を濡らしたまま小夜はお御堂に行ってみたが、鍵がかかっていて入れなかった。
今日元帥が来るか分からなかったが、待っていようと扉の前に腰を下ろす。今日は元帥に会いたい。
すると、お御堂の裏からあの歌声が聴こえて来た。
「……」
小夜の足は自然と天使に向かう。
相変わらず天使は気持ち良さそうに歌い、その声も変わらず綺麗だった。
と、天使は歌を途中で止め、小夜に振り向く。
「こんにちは」
「ご、ごきげんよう…」
普通の挨拶をされたのに、ついいつもの癖で教会の挨拶をしてしまった。
「もう一曲聴いていただけるかしら?」
「え?」
雨も降っていないのにずぶ濡れの小夜を見て何も思わないのか。
だが天使は、小夜が肯定も否定もしていないのに歌い始めた。
その瞬間、小夜の瞳から涙がこぼれ落ちた。