―――――
――
「あ〜〜〜、あちぃ〜。サッカーしてぇー」
「またそんなこと言ってる…」
夏休みに入って1週間ほどが経った。
午前中から気温はぐんぐん上がり、太陽が真上にくる頃には、歩くだけで汗だくになるほど暑い。
なのに通学路沿いの空き地では、小学生の男子達が楽しそうにサッカーをして走り回っていた。
補習が終わって私と一緒に下校していた優祐は、その中に入りたそうに小学生達を見つめていたけど、私は優祐のカバンをグイッと引っ張った。
「いててっ!そんな引っ張んなって、さおり」
「私達は勉強しないと。サッカーやってる場合じゃないじゃん」
優祐が部活を引退してから、数週間。
すでにこの『サッカーしたい』という文句は、口癖と言える程、私は耳にしていた。
…気持ちは分からなくもないけどね。
「…ま、いっか。高校に入ったらいっぱいサッカーできるもんな。補習頑張るか」
そう言いながら、優祐は私の右手を握ってきた。
手をつなぐと、まだ少しドキドキする。
でも嬉しい気持ちの方が大きくて、私はゆっくりと優祐の手を握り返した。
「…あのさ、明日補習終わったら、俺ん家で勉強しない?」
「え?優祐の家?」
「ああ。…都合悪い?」
「ううん…」
優祐の家かあ…。
そう言えば行ったことなかったかも。
「良かった。明日うちの親外出するらしいから、変に気ぃ使わなくていいからな」
「うん、分かった」
うわ…。
優祐の家。
初めて誘われた…っ!!

