つい、その声のする方向に顔を向けると、いきなり華恵の両手に顔を挟まれ、私の視線は強制的に、私の机の上へと移動させられた。
「ちょっと、痛いってば!華恵」
「あんな根も葉もないウワサ気にするなんて、さおりらしくないじゃん。素直に自分の気持ち認めればいいのに。こんな態度に出すぐらいバレバレなのにさ」
「別に私はいつも素直だけど?」
そうは言っても、そんなウワサがあること自体初めて知って、私の心は少し戸惑い始めていた。
私は軽くため息をついて、自分の荷物を片付け始めた。
「…由歌梨、わりい。今日俺部活だから。先に帰っといて」
「…ブカツ???」
「おう。だから一緒には帰れない」
「ブカツって、何?」
え、えぇ〜〜〜!?
いきなり耳に入ってきた斉藤さんの言葉にびっくりして、私はズッコケそうになった。
それは同じく新井と斉藤さんの会話が聞こえてきた華恵も同じだったみたい。
「な、何、斉藤さん?せっかく頬のキズ治りかけてたのに、またキズ増えるトコだったじゃん」
「…ああ!斉藤さん帰国子女だから、分かんない日本語とかあるんじゃない?」
「だからって、あんなハッキリ聞かなくても…。それが欧米式ってコト!?」
「それは分かんないけど…」

