「…もしかしてさおり、尻込みしちゃった?」
「何で尻込みしないといけないの?」
「いやさ、新井の幼なじみがまさか、あんな完璧すぎる人なんて、思いもしないじゃん」
「だから、何で私が…」
「正直になりなよ〜。私、応援するよ?」
「いや、だから私、華恵が思っているような…」
すると華恵は、頬杖をついてふぅっとため息をついた。
「まあいいや。もしさおりに気持ちの変化があったら教えてよ。私、さおりのこと応援してるから」
「意味分かんないけど……、そうするよ」
何で華恵がため息つくの?
ため息つきたいのはこっちなのに。
そうは思っても、私は何も言い返せなかった。
自習の時間なのに、またもや教室の後ろの方で呑気に大騒ぎしている新井を横目にしながら、私は華恵にうなずくしかなかった。
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