「俺、こんなつもりでさおりと別れたわけじゃなかった。さおりを苦しめたくなかったから。さおりに寂しい思いをさせたくなかったから。なのに結局こんなことになって…。何やってたんだろ、あの時の俺。だから、あれからスッパリ女と付き合うのは止めた。ずっとサッカーに打ち込んでた」
「私に苦しさや寂しさを味わわせたくなかったから、遠距離でも続けなかったんだ…」
やっと、あの時別れた理由が分かった。
優祐はいつでも、私のことを考えてくれてたんだね。
「さすがにさおりの彼氏と会うのは気まずくてできなかった。あの時の俺、ホントにボロボロだったから。さおりの元彼として恥ずかしいことしたと思ったから。だからダチに頼んで、さおりの彼氏に生徒手帳を返したんだ」
「だから、彼氏じゃないよ。中原くんは、クラスメイトで友達だし」
「でもあんな場面見たら……」
「あ、そうだよね…」
私が生徒手帳を落としたことすら気付かないくらい慌てて走り去って、それを男の人が呼び止めようとしていたら…。
カップルがケンカしたって思い込んでも不思議はないかも。
「優祐も正直に言ってくれたから、私もちゃんと言うよ。ホントは…、あの時中原くんに告白されたんだ。でも私、どう答えていいか分からなくて、そのまま飛び出しちゃって…」
「そうだったのか…」
「でもちゃんと考えて、断った。やっぱり私、優祐のこと忘れられなかったから。それから気持ちを新たにしてずっと優祐のことしか考えてないよ」
「さおり…、サンキューな」
優祐はふっと微笑んで、私の肩を抱いてきた。

